大判例

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東京地方裁判所 昭和25年(ヨ)3号 決定

(六十八名選定当事者)

申請人 神山文一 外一名

被申請人 池貝鉄工株式会社

一、保証 無保証

二、主  文

被申請人が、昭和二十四年十二月十三日附をもつて、別紙賃金目録氏名欄記載の者十七名に対してなした解雇の意思表示は、その劾力を停止する。

被申請人は右十七名の者に就業の機会を与えなければならない。

被申請人は申請人Aに対し、別紙賃金目録記載の三田工場関係十名分の、及び申請人aに対し、同目録記載の神明工場関係七名分の、同目録賃金表による昭和二十四年十二月十四日以降昭和二十五年五月十六日までの賃金を支払わなければならない。

申請人等のその余の申請はいずれもこれを却下する。

三、理  由

本件当事者双方の提出した疎明方法により一応認められる事実関係に基く、本裁判理由の要旨を次に掲げる。

一、当事者間に争のない事実

被申請人(以下会社という)は、肩書本店の外に、三田、神明、川口及び、溝ノ口の四工場をもち、その従業員は、会社の利益代表者を除き、本店及び各工場毎に、それぞれ池貝鉄工本店労働組合、全日本金属労働組合東京支部、池貝鉄工三田工場分会、以下(三田工場分会という)、池貝鉄工神明工場労働組合(以下神明工場組合という)、全日本金属労働組合埼玉支部池貝鉄工川口分会及び全日本金属労働組合神奈川支部池貝鉄工溝ノ口分会をその事業所の唯一の労働組合として組織し、更に右各組合は会社と共通事項に関する統一的な団体交渉をするため池貝鉄工労働組合連合会(以下連合会という)を組織し右各単位組合は各自連合会と連名の上で、会社との間に統一的な同一内容の労働協約を締結している。

而して別紙第一選定者目録記載の者は三田工場分会の組合員であり、第二選定者目録記載の者は神明工場組合の組合員であるところ、会社は企業整備に伴う人員整理計画に基き昭和二十四年十二月十一日発の書面で同月十三日附をもつて全社的に右選定者目録記載の者を含む従業員二百三十八名に対し、解雇の意思表示をなした。

二、当裁判所の判断

申請人等は、別紙第一、第二選定者目録記載の者に対する右解雇は労働協約第二十四条(協議約款)に違反し、無効である。更に同目録中○印記載の者については労働組合法第七条第一号違反としても無効であると主張するので、以下その点について判断する。

第一、本件解雇は労働協約第二十四条に違反するか。

前示各単位組合が連合会と連名の上昭和二十四年八月二十日各自会社との間に締結した労働協約(内容同一、有効期間各一年)の第二十四条には「組合は経営権が会社にあることを確認する。但し会社は経営の方針、人事の基準、組織及び職制の変更、資産の処分等経営の基本に関する事項については再建協議会その他の方法により、組合又は連合会と協議決定する。前項の人事とは従業員の採用、解雇、異動、休職、任免及びこれ等に関連する事項をいう。」

との規定がありまた同日右協約当事者間に交換された労働協約に関する覚書には「第二十四条にいう人事の基準の実行にあたつては必ず会社は組合と十分に協議し組合の了解の上で人事の決定を行うことを約束する。」と定めてある。而して右の如き協約約款は当裁判所が既にしばしば説示したるが如く、労働者の待遇に関する基準を定めたものであり、ここにいわゆる協議とは当事者双方が信義則に基き十分なる協議をつくすの意味に解すべきものであるから、たとい外観上一応協議の形式を備えても、会社側のみの信義則違背により相手方を納得せしめるに至らない場合にはこれをもつて解雇の有劾なる前提要件となすことはできない。そこで次に本件人員整理が果して信義則による協議を経たものであるかどうかについて考えてみる。

(1)  会社の経理状況

会社は終戦とともに軍需工場より、民間向印刷機械内燃機関に主力を置く民需工業に転換したが、戦後重工業界の極度の不振に加えて、国家補償の打切り、労働攻勢による賃上要求等諸要因の山積により、極度の赤字経営に陥り、遂に昭和二十二年四月末三〇%の賃上承認を機として会社経営陣の総退陣を余儀なくせられ、同年六月従業員幹部が会社役員に昇格就任したが、この頃より会社の経営に疑念をもつ大口債権者たる興業銀行は一応貸出を止めて事態を静観する態度に出て、その後同年十月更に一〇〇%の賃上要求の貫徹なるや、金融機関は完全に池貝に対する融資を断つたため、爾後は高利債の借入、売り喰い等によつてかろうじて経営を続けるの外なかつた。しかも会社負債は既に一億円に及び一方有効需要の激減に伴い会社経営は当時危機寸前にあつた。この間に処して会社は昭和二十四年三月各工場の独立採算制を実施して再建合理化を図ろうとしたが生産実績の向上を望むことを得ず、一般的危機の深化によつて所期の目的を達し得ないで再び綜合経営制に復帰せざるを得なかつた。かかる苦況に立つ池貝の再建のため招かれて昭和二十四年六月会社顧問となり、次いで同年八月社長に就任したのが現社長岡崎嘉平太であり当時労使ともに同社長の銀行融資をバツクとする経営的手腕に期待をかけていたことはおよそ推測するに難くない。かくて会社は同社長就任を機として、ペイライン月産三千五百万円を目途とし、生産計画の促進監察、生産実績の向上、営業活動の拡大刷新等一連の措置よりなる第二次生産計画を樹立し、池貝の再起をこの成否にかけたが、毎月の月産実績は常に生産計画を下廻り、昭和二十四年八月より同年十月までの平均月産は三千万円に過ぎず、また同年六月から同年十月までの間に借入れた運転資金六千万圓も殆んどこれを喰いつくし、しかも同年十月までの未囘収売掛金四千四百万円もこれを担保として三千万円を借入れ、利用し得る原材料としては当時約千万円程度のものを残すに過ぎない実状であつた。しかも工作機械の見透も困難となり他の同業競争会社と比較して製品のコストは高く販売条件も不利であり一般経済事情の変化に伴い販売上の困難を目前に控えるに至つた。

ここにおいてかかる第二次生産計画の低迷状態を速かに脱却し、緊急に会社存立の危機を未然に最少限度に喰い止める方策として採られたのが今次の人員整理であり、経理的には月産の差額月五百万円の赤字を内二百五十万円は経営の節約により、内二百五十万円は人件費の削減によりこれを解消すべく、従業員中低能率者、出勤不良者、生産を妨げる者等約一〇乃至一五%を整理し、実働率の向上により生産の維持を図ろうとしたものであることが一応認められる。

(2)  本件人員整理に関する会社と組合との交渉経過

会社は昭和二十四年十月初頃から人員整理を企図し、同月十六日協約第二十四条に基き連合会に対し経営方針に関する協議を申入れ、翌十七日から同年十二月八日まで前後六囘に亘り協議をなした。今右協議過程の大要をみるに、会社は同年十一月十七日の第一囘協議会において理由書、経済白書等の文書を呈示てし人員整理の必要已むを得ない所以及び整理基準を説明した上約一五%の人員整理を発表した。これに対して連合会はかかる従業員の地位に重大なる影響を及ぼす経営方針については、協約第二十四条により会社組合間の協議決定機関である再建協議会にかけて審議の上協議決定するかその他の団体交渉により協議決定すべきものであるとの見地から、人員整理の必要があるかどうかを知るため、まず経営方針についての協議に入るべきであり、これなくしては整理基準の協議にも入り得ないとしまた会社の現況においても整理の必要は認められないと主張したが、会社は人員整理の基本線は動かし得ないとしてこれに応ぜず、整理基準の協議促進を強調するのみにて終始し、結局同年十二月八日の第六囘協議会において若干整理基準に関する質疑応答及び一部の修正がなされたのみで、会社は同日協議を打切り、連合会に対して最終囘答を求め、遂に同月十日連合会より本店、溝ノ口、川口の各組合は人員整理は已むを得ないとしても退職条件に異議ある旨、三田、神明の両組合は人員整理も納得できない旨の囘答を受けるや、時日の遷延を許さずとして、即日人員整理の実施を宣し、翌十一日発の書面をもつて別紙選定者目録記載の者を含む三田工場四十八名、神明工場六十九名、溝ノ口工場四十名、川口工場六十七名、本店十四名の従業員に対し同月十三日限り解雇する旨の通告をなしたことが一応認められる。

(3)  本件協議の当否

(イ) まず本件人員整理の必要性について考えてみるに、会社の経理状況は前記(1)認定の通りであり、かかる状態のままで推移することは、結局池貝の破滅を意味するに外ならないから、これに対して適宜再建の措置を講じなければならないことはいうまでもないところであるが、池貝の現状は当時危機寸前にあり、この危機を切抜けて企業の継続を図るためには早急に合理化体系を整えて金融資本の援助を待つ以外に途のない事情にあつたことが窺われる。而して合理化方策としては人員整理を前提としない組合側の献策の如きも、もとより一理ないわけではないが、第二次生産計画の失敗その他過去の実績に徴し早急にその実効を期し難いものがあると思われるから、今次の人員整理は当時の池貝としては緊急已むを得ない措置であつたと認めなければならない。もつとも産業資本に対する金融資本の制圧については是非の論もあるであろうし、また池貝をして事ここに至らしめた一半の責任は従来の会社経営陣の無能弱体にも帰せられることは否めないが今これを云々してみても、池貝の現実の危機救済の面においてはなんら寄与するところなく、また労働者の地位も資本主義経済体制の下においては企業の存立を前提としてはじめて是認せらるべきものであるから、今次整理による一部従業員の犠牲は遺憾ながら已むを得ないものといわなければならない。

(ロ) 次に会社の協議態度について考えてみる。前記(2)認定の如き会社の態度は通例の場合にあつては信義をつくさないものとして協約違反の責を免れ得ない。なんとなれば協約第二十四条にいわゆる「人事の基準」とは同条立言の趣旨に徴する解雇条件のみならず、解雇の要否、その範囲等の問題をも包含するものと解すべきであり、従つて本件の如き大量解雇の場合においては解雇の要否、範囲等を決定する必要上からも当然その前提たる経営方針についての協議がなさるべきものだからである。しかしながら本件の場合にあつては、人員整理の緊急必要のあることは右(イ)認定の通りであり、しかも池貝の従業員少くともその組合幹部は従来の対会社との闘争過程を通じて池貝の現状に対しては相当深い認識をもつていたものと推測するに難くないから、その労使の立場の相違は暫く措き、池貝存続のためには、完全雇傭の線を固執することなく、人員整理の基本線については、一応これを譲歩し、進んで整理の範囲、整理基準等の協議に入るべきであつたと思われる。もつとも会社の態度において組合側を納得せしめる上において欠けるところがあつたことは否めないが、組合側の態度において池貝の現状に照して余りに自説を固執し過ぎたと思われるふしがないわけでもない。かく考えるとき会社が緊急の必要に迫られた事の余り、時日の遷延を許さずとして、連合会の最後囘答を待つて直ちに解雇を発表するに至つたこともあながち協約違反として咎め得ないものがあるといわなければならない。(もつとも溝ノ口、川口、本店の各組合は退職条件に異議を留めたが結局人員整理を承認したものであるから、会社はこれらの組合に対しては退職条件の点につき、更に協議をつくすべき義務があるに拘らず、これを怠つたことは失当のそしりを免れ得ないが、この点は今直接本件に関係がないから暫く措く。)

(ハ) なお連合会の性格について争があるから、この点について一言する。連合会はその出発の初には規約をもち、各単位組合の連合体としての実質と形式をもつたが、昭和二十一年に各単位組合の全部が全日本機器に加入するとともに、機器傘下の連合体となり、それまでの規約を破毀した。

そして機器の線に沿つた新規約を作成するために審議したがまとまらず、その後昭和二十四年三月になつて本店及び神明の各組合が機器の後身である全金属を脱退し、全金属傘下の連合体でなくなり、連合会の性格は一変したので、連合会として強力な闘争を展開するためには、是非とも規約を作成する必要ありとし、その草案も作られたけれども、遂にまとまらないまま今日に至つた。すなわち連合会は現に規約もなく、単位組合に対する統制力ももたないが、各単位組合が企業内において共通する利益に基き統一ある行動をとり、共同闘争によつて労働者の地位を向上させることを目的とし、各単位組合の委員長を含む三名の各代表で構成される連合委員会と連合会を代表する連合会委員長をもち、単位組合間の行動の統一を調整し会社と団体交渉をする点において一種の組合連合体であることに変りはなく、ただ、単位組合との関係における決議権やその他の権限の範囲は明らかでなく、上下関係はないけれども、従来の会社と連合会及び単位組合との間の慣行や、連合会に諸種の権利を認めた協約の規定に徴し、少くとも各単位組合に共通する事項については、単位組合が特に反対の意思表示をしない限り連合会にも団体交渉権が認められ、且つ会社と連合会との間に団体交渉が行われるときは、その効果は各単位組合にも及ぶものと解することができるのであつて、申請人等の主張するように、単に「可能なる限り統一的行動をとるための共同闘争機関」に過ぎないということはできない。従つて本件人員整理が各単位組合と会社間の前記協約に違反したかどうかは、右連合会と会社との協議の経過により判断して差支ないものと考える。しかしながら昭和二十四年十二月十日の前記連合会の最終囘答をもつて、各単位組合が協議権を抛棄したものと解すべきではなく、右は連合会が単位組合の意見の統一不能を理由として、爾後の折衝を各単位組合の個別交渉に任せたものと解すべきであるから、会社としては爾後各単位組合との個別交渉に移るべき義務あるものといわねばならない。このことは協約第二条(交渉単位に関する規定)の趣旨からも窺われる。しかし本件の場合各単位組合は連合会と会社との交渉過程を通じ、十分にその協議経過を知悉していたはずであり、殊に三田、神明の両組合にあつてはたやすく、人員整理の基本線を承認するものとは認められないから、この両組合については個別交渉を続けても結局妥結点に到達することは困難であつたことが明かであり、従つて会社がこの両組合に対し個別交渉に入らなかつたとしてもこれをもつて協約違反ということはできない。

第二、別紙選定者目録中○印記載の者に対する解雇は不当労働行為か。

(一)  不当労働行為判定の標準

右○印記載の者が組合役員乃至活溌な組合活動者として会社の注視を受けていたことはその疏明十分である。しかしながらさればといつて同人等に対する解雇が直に不当労働行為であると速断するわけにはいかない。解雇が不当労働行為たるには組合員(主として組合役員)たること乃至は正当な組合活動をなしたることを理由とする差別待遇意思(不当解雇意思)が解雇に対して決定的原因を与えていることを要する。他に有効なる解雇原因が存し、これが解雇の決定的動機となつている場合にはたとい差別待遇意思を随伴するも不当労働行為は成立しない。

すなわち不当労働行為の成否は差別待遇意思と他の原因といずれがより支配的なりやの観点から決すべきものである。よつて次に右○印記載の者に対する解雇がいかなる動機に出たものであるかについて判断する。

(二)  本件の整理基準

会社は本件人員整理の基準として(1)出勤状態の悪い者(2)技術低位又は非能率の者(3)職務怠慢の者(4)社規を紊した者又は業務命令に違反した者若くは職場秩序を乱した者(5)会社の業務運営に協力しない者(6)精神若くは身体に故障があるか又は虚弱、老衰、疾病のため業務に堪えられない者の六項目を設け、三田工場では人員詮衡の方針として、各項目を五級(A、B、C、D、E)に区分し、これら各項目の採点成績を検討して綜合点甲、乙、丙、丁、と定めEのあるものを丁とし、C二つ以上のもの、D一つでもあるもの、E一つでも他の項目の成績がよく情状酌量の余地あるものを丙とし数次に亘り詮衡を重ねた結果結局丁該当者四十七名、丙該当者一名(基準(6)該当)合計四十八名を解雇した。また神明工場では各基準項目を四級(A、B、C、D)に区分し、各項目の採点の結果一応Cが二項目以上あるもの及びDが一項目でもあるものを整理候補者とし、数次詮衡を重ねた末、結局Cが三項目以上あるもの及びD該当者六十九名を解雇者と決定した。

(三)  共通的整理基準該当事実の判断

(A) 三田工場関係(細胞活動の件)

整理基準(5)「会社の業務運営に協力しない者」に該当する具体的事実として、会社は「何某は日本共産党三田細胞の幹部乃至指導者であり常に他人を煽動して会社の経営方針を誹謗し工場の業務運営を阻害することが多かつた云々」という事実を挙げ、三田工場の解雇者中三田細胞の幹部乃至有力な指導者に対する右基準の評価については殆んど最低位のE該当者と定めている。これは「池貝今日の窮乏を招来した最大原因の一つは三田細胞のフラク活動にある」とする会社側の見解を端的に表明したものであり、三田細胞の過去の功罪に対する決算的評価であるということができる。本来三田細胞は日本共産党の一組織であつて、労働組合たる三田工場分会とは別個の存在であり、細胞活動自体は労働組合の行為ということはできないが、細胞所属の組合員の活動がすべて組合行為でないということももとよりできない。

而して実際問題としては細胞活動と組合活動との間に截然と一線を引き得ない場合が極めて多い。それは細胞活動と組合活動とは必ずしも両立し得ないものではなく、細胞活動たるとともに組合活動たる性質をもつことを妨げないからである。今本件についてこれをみるに、三田細胞は昭和二十一年六月結成以来その活動によつて組合員の意識を高め、組合大会や執行委員会をリードして数次の賃上要求の先頭に立ち、組合をして会社との協定に成功せしめ、団結の推進体を形成してきたものであるが、その間三田細胞の排撃が組合内部から自主的に行われたような事実はなく、むしろ組合員の大多数は、要求の根本においてこれと同一の線を自主的に保持決定してきたものと認められるのであつてかかる活動は一面細胞活動たるべきも、同時に組合活動たる性格をもつものというに妨げない。

而してかかる組合活動が正当なものであるかどうかは、単に会社の経理面からばかりでなく、相対立する労使双方の立場、事態の認識、相互の態度等あらゆる関係を考慮した上で決すべきであり、この点に関する疏明は未だ十分ではないが、ともあれ、この種組合活動は労働者の経済的地位の向上を目的とするものであつて、反証のない限り、会社との協定によつて合理的な解決を図ることを期待しているものということができるから、労働組合の正当な行為といい得る。会社は三田細胞の活動は会社の破壊のみを目的とするものであると主張するが、これを認めるに足る疏明はない。

なお会社が三田細胞全体の活動の一例証として提出した機関紙「主軸」ビラ等には、措辞激越なるものや会社幹部に対する侮辱的字句等が見受けられるけれども、その基調においては会社の従業員に対する施策を労働者の立場から批判し、意識の昂揚により団結の強化を図る等労働者の経済的地位の向上を目的とするものであることが窺われるのであつて、会社のいうように、会社の破壊のみを目的とする宣伝手段であるとは到底考えられない。従つてこれをとらえて「会社の経営方針を誹謗し工場の業務運営を阻害するもの」として、解雇事由に数えることは妥当を欠くものといわねばならない。

(B) 神明工場関係(残業拒否の件)

整理基準(4)「社規を紊した者又は業務命令に違反した者若くは職場秩序を乱した者」に該当する具体的事実として会社は「組合との協定による正規の残業命令を正当の理由なく拒否した」という事実を挙げている。従来神明工場の時間外勤務の取扱は、昭和二十二年九月六日附神明分会委員長より神明工場長宛「労働基準法施行に当り時間外勤務取扱に関する件」と題する文書に基き「原則として一週間実働四十二時間を確保し、已むを得ない場合は基準法により組合と協定する必要なき範囲で時間外勤務を命ずることができる。なお基準法により組合と協定を要する場合にはその都度組合の承認を得る」との方針に則つて行われてきたが、昭和二十四年八月七日神明工場組合と会社との間に時間外労働に関する正式の協定が結ばれ、「時間外勤務手当は当月内に確実に支払うこと、時間外勤務は作業計画上真に必要なるもののみに限定すること、時間外勤務の割当は公正妥当なること、各人については隔日(週三囘)二時間勤務となるようにし、それを超えないことを原則とすること」等の諸事項が定められた。その後若干の修正を経たが大差なく、同年十一月九日組合より会社に対し「二時間以上の残業拒否、二時間以内の残業及び臨出の拒否返上も職場の自主的決定に一任する」との通告がなされるまで右協定は実施せられてきた。而して組合と会社との間に協定がなされた以上、組合員は右協定に服する義務あるものというべきであるから、正当の理由なくして会社の残業命令を拒否することは許されない。この点につき申請人等は残業休日出勤については本人の自由意思による旨の条件が附けられていたと主張するけれども、右協定の存続期間中にそのような申合せ乃至諒解事項があつたことを疏明するに足る資料はない。

(C) 三田工場及び神明工場に共通する事項

1 「職場スト」の件

前記整理基準(4)に該当する事実として、「昭和二十四年二月より同年七月頃に至る間数囘に亘り職場を煽動して職場懇談会等の名の下に職場ストを行い生産を阻害した云々」という事実が挙げられている。

なるほどその頃数囘に亘り一日一時間乃至数時間職場懇談会等の名の下に就業時間中作業停止の行われたことは申請人等も争わないところであるが、当時会社は営業収入激減し、一月、五、六囘乃至多きは十二、三囘に亘つて賃金を分割遅払し、少いときは一囘百円、二百円を支払うに過ぎないような状態であつたことが窺われるから、従業員の不満が爆発し、賃金支払要求貫徹のため職場懇談会等に発展したとしても、労働者の立場としては緊急已むを得ざる非常措置として敢えてこれを咎め得ないものがあるといわなければならない。もつとも会社も当時窮乏の底にあり遅払も已むなき事情にあつたことはこれを認めるに決して吝かでないが、労働者としては自己一身はもとより家族の生存にも関する重大事であるから、右の行動をとらえて、会社の実情を知りつつ故意に生産を阻害したとの非難は当らない。しかも組合は賃金遅払問題に関しては一面会社の窮状を認め、争議行為に出ることは会社の財政的窮乏に拍車をかけるものとして之を控える態度に出たが、他面従業員の窮状を思うときその不満、激昂もむげに押え得ずし各職場の動きをそのまま黙認してが窺われる。かような当時の職場の空気からすれば、右のような職場の動きはそのきつかけはいずれにあるにせよ、職場の内部から盛り上つたものとみるのが自然な考方であろう。

なお組合の統制によらない職場ストの適否の問題については議論のあるところであり、本件が職場ストとして争議行為の形態を整えたものであるか否かについては未だその疏明が十分でないが、そのいずれにせよ組合の黙認したものであり、また右認定の如き事情の下に発生したものであつて会社が自らの債務不履行を措いて本件職場活動の責任を追及することはクリーン・ハンドの原則にも反するものと認められるから、これを不当な組合活動として整理基準(4)にあてはめることは妥当でない。

2 職場離脱の件

前記整理基準(4)又は(3)(職務怠慢の者)の該当事実として就業時間中における職場離脱が挙げられている。この点については組合活動との関連が問題となるので以下主としてこの関連性の問題について考察する。昭和二十四年八月二十日現行労働協約が締結されるまでは昭和二十一年十一月十一日締結の旧協約が効力をもつていた。而して旧協約第六条には「会社ハ就業時間中デモ組合ノ教育活動及ビ集会ヲ行フコトヲ認メ特ニ其ノ役員ハ組合ノ仕事ニ専念スルコトヲ認メ組合員ガ組合活動ノタメ作業ヲ休止シテモ有給トスル」との規定が存し、就業時間中の組合活動は現行協約に比し極めて広く認められていた。また昭和二十三年三月三十日制定の従業員就業規則においてもその第二十六条に「労働時間中に組合運動、集会等会社の業務に関係のない事由で就業しないときは、予め所属長へ届出をすることが必要である」と規定されているに過ぎない。しかしながら組合活動であれば事のいかんを問わず無限に職場離脱が許されるものと解することはできない。そこには自ら一定の限界があり、例えば専従者のある場合には他の組合役員の行動範囲は自ずと減縮され、普通組合員に至つてはその行動範囲は更に狭められるものといわねばならず、また事の大小、軽重、緩急のいかんによつても、自らその活動範囲に広狭の差を認めざるを得ない。今本件についてこれをみるに、前記○印記載の者は組合役員乃至職場委員の地位にあつた関係から前記認定の如き極端なる賃金遅配の状況下にあつては、これが打開のためにする組合運動のため、その職場を離れざるを得ない機会の多かつたことはこれを窺うに難くないが、同人等の職場離脱がすべて、組合活動のためとして許さるべきものであるか否かについては個別的考察に俟つの外はない。(なお旧協約には専従者の規定はないが、事実上の専従者は会社に届出でられていた。また職場委員の届出はなされていなかつたが、旧協約の下においては右の如き遅配下における専従者以外の組合役員乃至職場委員の遅配打開のためにする就業時間中の組合活動は是認せらるべきである。)

3 不当労働行為成否の個別的考察

本件整理基準六項目中○印記載の者に対する該当基準として会社の挙げるものは(1)出勤状態の悪い者(2)技術低位又は非能率の者(3)職務怠慢の者(4)社規を紊した者又は業務命令に違反した者若くは職場秩序を乱した者(5)会社の業務運営に協力しない者の五項目の内一項目乃至数項目である。

(A) 三田工場関係

(1) 不当労働行為の成立するもの

A、G、F、C、D、K、Mは(4)(5)該当、B、Eは(3)(5)該当、Rは(3)(4)(5)該当とされている。しかしながら右基準該当事実の内容をみるに、主要事実として取上げられているものは(4)については前示職場スト並びに職場離脱の問題であり(5)については三田細胞活動の問題であり、(3)についても主として右職場離脱の問題が関連していることが判る。もつとも職場離脱の点については会社の主張する離脱時間がすべて申請人等の主張するような組合活動その他職務上の必要のために費されたか否かの点の疏明は必ずしも十分でないが当時の甚だしい賃金遅配の状況からすれば、前示一般的考察の項において述べたような事情の下になされた職場離脱の多かつたことを窺うに難くない。会社の挙げるその他の該当事実については一部疏明のあるものもあり、また疏明の十分でないものもあるが、これらの事実は右主要事実に比すれば、特に取立てて云々するに足りない。しからば右十名に対する本件解雇は前示一般的考察の項において述べたような理由により結局正当な組合活動をなしたことを解雇の決定的原因とするものというに妨げないから、不当労働行為の成立を認めざるを得ない。

(2) 不当労働行為の成立しないもの

Jは(1)(3)(4)(5)該当、Sは(2)(4)(5)該当とされている。まずJについてみるに会社の挙げる(1)(3)該当事実については一応の疏明があるといえるし、また(4)についても正当事由の疏明不十分な職場離脱が割合に多かつたように認められる。次にSについても(2)該当事実に関する疏明は一応備わつており、(4)についても正当事由の疏明の足らない職場離脱が割合に多かつたことを窺うに足る。而してこれらの事由は企業合理化に伴う人員整理の場合においてはそれ自体だけで、優に解雇の決定的原因たり得るものと認められる。もつとも右両名に共通する(5)該当事実は結局は前記三田細胞活動の問題に帰し、また(4)該当事実中職場スト等の件もこれを解雇理由となし得ないことは前段説示の通りであるが、右両名に関する限りにおいては、このことなくも解雇の有効原因は右認定の如く既に他に存し、会社がこのことなくば右両名を解雇しなかつたであろうと推測するに足る疏明はないから、この点は会社も相当重きを置いたであろうことは窺うに難くないが未だもつて解雇の決定的原因であつたと断ずるわけにはいかない。すなわち、たとい不当解雇意思が随伴するもこれが解雇の決定的動機をなすものでない限り不当労働行為は成立しないものといわねばならない。

(B) 神明工場関係(各人名下括弧内の数字は会社の挙げる整理基準該当項目を表わす)

(1) 不当労働行為の成立するもの

(イ) a((3)(4)(5))

(3)(5)該当事実として会社の挙げる「同人の就業実績が少なかつた」という事実は、同人が過去長期間に亘り殆んど組合役員であつたことによるものと認められるものであり、しかも旧協約時代にあつては、組合役員の就業時間中の組合活動は相当広範囲に認められていたのであるから、就業実績の少いことが組合業務以外の事由に基くことの疏明のない限り、これをもつて職務怠慢または非協力とすることは当らない。而してこの点に関する会社側の疏明は未だ不十分である。また(4)該当事実として会社の挙げる「就業時間中に共産党細胞機関紙の編集、印刷等をした」という事実も業務時間の私費という点より、むしろ共産党細胞の仕事であるという点に重点が置かれているように思われるのであつて、かかる考え方は政治活動に対する会社の偏見を示すものであり、しかもその頻度、消費時間等については、本件に現われた疏明資料の程度をもつては未だ職場秩序紊乱として特に取上げるに足りないものと認められる。

次に(4)(5)該当事実として会社の挙げる同人の放言なるものも、労使の立場の相違、当時の会社の状況並びに一般情勢等からすれば、労働者的立場よりする会社施策の批判または労働者意識の昂揚に対する見解の表明以上の意図をもつてなされたものとは認め難いから、その措辞に多少誇張的表現があつたとしても、これをとらえて云々すべきではない。もとより「会社企業の破壊のみを目的として右の言辞がなされた」という会社側の主張についてはこれを肯認するに足るなんらの疏明資料もない。同人の整理基準該当事実にして右の如きものであるとすれば、同人の従来の組合活動経歴に徴し、その解雇が結局は組合役員たること乃至正当な組合活動をしたことを理由とする不当労働行為に該当することは明白である。

(ロ) b((2)(4)(5))

(2)該当として会社の挙げる技能低位の事実については、会社側提出の資料は申請人側の反駁資料に比し薄弱であり、従つてこの点に関する疏明は不十分といわねばならない。また(4)該当事実として挙げられている「作業時間中二名の従業員に対し共産党入党を勧告した」という事実については具体的な疏明方法はないが、いずれにせよ、かようなことが職場秩序に反するのはそれが労働時間を無断浪費する点にあるのであつて入党勧告自体にあるのではない。しかるに会社が消費時間の量、場所的条件等を余り問題にせず、入党勧告自体をとらえて直ちに職場秩序違反に問うていることは基準の適用につき過誤あるものといわねばならない。次に(5)該当事実として挙げられている「生産復興会議幹部就任中の反工場幹部的言説」についても、右言説の根本的基調は組合の立場からする会社施策の批判にあると認め得るのであつて、それが生産を阻害することを目的としたものと断定するには疏明不十分である。同人の整理基準該当事実にして右の如しとせば、同人の従来の組合活動経歴に照し、その解雇が不当労働行為たることは明らかである。

(ハ) n((2)(4)(5))

同人は非能率者として(2)該当とされている。しかし同人は終戦前においてはその技術成績は上位にあつたことが疎明せられており、その後他の同一経験工に比して技能が落ちたのは、同人が終戦後は殆んど組合役員として組合業務に従事していたためであつて、旧協約時代にあつては、就業時間中の組合活動が相当広く認められており、前にしばしば述べたような当時の会社の状況から組合役員としては当時就業時間中も組合業務のために時間をさかれることが多かつたことに基因するものである。而してかような事情の下にある者の技能の判定は単に現状のみでなくその将来性をも考慮してなさるべきであるにも拘らず、この点に対する配慮がなされていないことは基準の適用を誤つたものというべきである。しかも将来性のいかんについてはなんらの疎明がない。次に(4)該当の残業拒否の件については同人に拒否の正当事由あることのなんらの疎明はないから、この点は正に整理基準に該当するものといい得る。(5)該当事実のうち同人の能率給に関する言動は、同人が組合役員として労働組合の批判的立場から反対したものとみるべきであつて、その用語の表現の末にとらわれて、徒らに批判的意見を封殺すべきではない。また同人の組合役員就任中の就業実績を根拠としてこれを非協力と断定することは、aの場合において述べたと同様の理由により、それが組合業務以外の事由によることの疎明のない限り許されない。しかもこの点に関して会社は別段の疎明をなさない。右認定の通りであり、そのうち残業拒否の点は有力な解雇原因たり得るが、同人については、結局同人が永く組合役員の任にあり活溌な組合活動をしたことが解雇の決定的原因をなすものと認められる(このことは同人の考課中(5)のみがDとされていることからも判る)からその解雇は不当労働行為と断ぜざるを得ない。

(ニ) s((4)(5))

同人に対する整理基準該当事実については、会社提出の疎明資料は同人の反駁に対して根拠極めて薄弱で、到底認定の資となし難く、他に右事実を疎明するに足るなんらの資料もない。しからば同人の解雇は結局同人が昭和二十一年七月組合の初代婦人部長となり昭和二十二年七月まで組合業務に熱心に従事しその後も有力な婦人組合員であつたことがその決定的動機であつたと断定するにはばからない。従つてその解雇は不当労働行為たることは疑ない。

(ホ) e((4)(5))

(4)該当事実として会社の挙げる就業時間中の政党活動及び「アカハタ」配布の件は疎明不十分である。また(5)該当事実として挙げられている職場配転拒否の件は、旧協約時代には組合の承認なしに会社が一方的に職場配転はできないことになつていたのであるから、同人が協約を理由に拒否したことをもつて直ちに非協力の最低位としたことは納得できない。一方同人は組合の婦人対策部長の経歴があり、組合活動に熱心であつたことが認められるから、結局同人の解雇は同人が組合の正当な行為をしたことを実質的理由としたものと断ぜざるを得ない。従つて右解雇は不当労働行為というに妨げない。

(ヘ) f((3)(4))

(3)該当事実として挙げられている職場離脱の件については既にしばしば述べたように、それが組合業務以外の事由によることの疎明のない限り職務怠慢とはいい得ない。しかるにこの点に関する会社の疎明は極めて不十分である。また(4)該当事実として職場ストの問題が取上げられているがこの問題についても一般的考察において「職場ストの件」として既に論じた通りこれを解雇事由として取上げることは許されない。もつとも会社の主張する「同人が第一作業区平削盤の作業者に対し強制的にスイツチを切らせサボに同調させた」というような事実があるとすれば、その責任は同人が負うべきであるが、この点についてはこれを疎明するに足る具体的な資料はない。また同人は昭和二十年十二月以来殆んど全期間に亘り組合役員として活動してきたものであつて、その言動には時に激越に亘るふしがあつたことはおよそ推測するに難くないが、それだけで同人のなした組合活動が正当でないということはできない。しからば同人の解雇は結局同人の正当な組合活動を理由とするものであつて、不当労働行為たるを免れない。

(ト) k((4))

同人が一週間のうち四、五囘就業時間中十分乃至十五分を費して「アカハタ」その他の刊行物を職場に配布し、また就業時間中にこれらのものを読んでいたことについては一応の疎明がある。これは確かに社規違反ではあるが、しかしそれは主として機械操作上の待時間を利用してなされたものと認められるのであつて、しかも同人はこのことについては一度も上長から注意を受けたことがなかつたということも右事実を解雇事由として取上げる場合には一応考慮されなければならない。次に同人が職場ストに参与したことについてはその疎明は十分であるが、この点については既にしばしば述べたような理由によりこれを解雇理由とすることは許されない。最後に組合役員として用務のないときにも作業に就かないため稼働率が非常に少いとの点については、同人は昭和二十四年七月以降組合執行委員兼生活部長として多忙な組合業務に従事していたことが推測できるのであつて、会社提出の疎明資料の程度をもつては、同人が、組合役員としての用務がないのに殊更に就業を怠つていたと認めるに足りない。会社は以上三つの事由を合せて同人を(4)該当の最低級Dと判定したのであるが、右のうち後二者がその決定的要素であり、「アカハタ」の無断配布等の如きはそれだけでは到底Dと判定し得ないことは明らかであるのみならず、同人の(4)以外の採点成績は他の残留者に比して遜色ないものと認められるから、結局同人の解雇は同人が役員であり、且つ熱心に組合活動をしたことがその決定的原因であると断定して妨げない。従つて右解雇は不当労働行為というべきである。

(2) 不当労働行為の成立しないもの

v((3)(4)(5))w((2)(3)(4)(5))、i((3)(4)(5))、j((2)(3)(4))、m((3)(4))、u((2)(3)(4)(5))、x((2)(4)(5))、y((2)(4)(5))g((2)(4))、z((4)(2))、h((4))に対する各整理基準該当事実中、能率給制度に対する反対、組立作業方式変更に対する反対、賃金遅払に対する憤懣的言辞等をとらえて、会社が「非協力」としている点は、労働者の立場からする意見の発表を封殺せんとするものであつて、これを許容し得ないが、その他の事実については概ねその疎明があり、且つ「職場スト」の問題を除外しても、なお残余の基準該当事実は企業合理化に伴う人員整理の場合においては有効なる解雇原因たり得るものと認められる。もつとも同人等が熱心な組合活動者であることもこれを認めるに決して吝かでないが、仮にしからずとするも本件の如き企業整備の場合にあつては右の如き基準該当事由をもつ者を解雇するのは当然であつて、同人等が熱心な組合活動者でなかつたならば、解雇しなかつたであろうということの疎明のない本件にあつては、たとい差別待遇意思が随伴してもこれをもつて直ちに不当労働行為の成立を是認するわけにはいかない。

第三、仮処分の必要性

会社を唯一の職場とし、賃金によつて生活を維持している右十七名の者(不当労働行為の成立するもの)が、不当労働行為として解雇が無効であるのに拘らず、本案判決確定に至るまで解雇者として賃金の支払、就業の点で差別待遇を受けることは同人等にとつて著しい損害であり精神的苦痛も甚大であると認められるから地位保全の仮処分をする必要があるといえる。もつとも同人等の本件賃金請求に関する申請中既に履行期の到来した昭和二十四年十二月十四日以降昭和二十五年五月十六日までの賃金については、就業規則及び従業員給料規則の定めに従い即時交付せしめる緊急の必要があるが、将来の賃金請求権については本裁判に規律せられる会社の任意履行に俟つのが適当であると認められるからこの部分に対する仮処分の必要は特にないものと考える。

よつて、主文の通り決定する。

(裁判官 古山宏 中島一郎 緒方節郎)

(別紙)

第一選定者目録(申請人Aの選定者)

○ A

○ F

○ K

○ B

○ G

○ C

○ M

○ R

○ D

○ S

○ E

○ J

(但し○印は、労働協約違反の外に労働組合法第七条第一号を主張する者)以上三田工場関係

第二選定者目録(申請人aの選定者)

○ a

○ f

○ k

○ u

○ z

○ b

○ g

○ v

A'

B'

C'

D'

E'

○ h

○ m

○ r

○ w

○ i

○ n

○ s

○ x

○ e

○ j

○ y

(但し、○印は、労働協約違反の外に労働組合法第七条第一号違反を主張する者)以上神明工場関係

賃金目録

氏名

一ヶ月平均賃金

氏名

一ヶ月平均賃金

(一) 三田工場関係

(二) 神明工場関係

一〇、九八〇、〇〇

一二、一一八、〇〇

七、五九四、〇〇

九、七七一、〇〇

一一、〇二〇、〇〇

九、八七七、〇〇

一〇、七九五、〇〇

七、八六二、〇〇

七、三二三、〇〇

五、一八五、〇〇

八、一三二、〇〇

九、四七二、〇〇

九、一四三、〇〇

一二、四七八、〇〇

一〇、一九〇、〇〇

九、一四〇、〇〇

七、八〇六、〇〇

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